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“Dolce”(ドルチェ)はイタリア語で「柔和に、柔らかく」を意味します。そんな名前を持つKiwi Ears Dolceは、その名前から一見フラットなイメージを持つかもしれませんが、実際にはエネルギッシュな低音が特徴のユニークなイヤホンです。競合する製品である「Truthear HOLA」や「7HZ Salnotes Zero」と比べても、Dolceの特徴を好む方もいるでしょう。
Kiwi Ears Dolceは10mmのダイナミック振動板を特徴とし、業界をリードするLDP (LDPE+LCP) ダイヤフラムを使用しています。価格は25ドル(2023年9月20日現在のAmazon価格で3,630円)と、低価格帯に位置する製品です。
音楽ジャンルについては、ジャズが特に心地よく聴けると感じました。また、低音を活かすジャンルであるテクノやメタルコアにもよくマッチします。個人的には「KZ ZSN PRO X」よりもDolceの低音が好みです。手持ちの中では、「Whizzer ポータブルDAC DA1」と「NICEHCK BlackCat」の組み合わせが最適でした。
この記事では、製品の概略、スペック、音域ごとの特徴、さまざまなジャンルの音楽を用いた聴き比べを含めて詳しくレビューします。
中華イヤホンであるKiwi Ears Dolceは実際に見る機会が少ないかもしれませんので、記事中には多くの写真を掲載しています。詳しく見てみたい部分があれば、ぜひコメント欄からお知らせください。
Introduction

Kiwi Ears Dolceは、新世代のカーボンナノチューブ複合ダイヤフラムを駆使して、音響性能の向上を実現しています。この材料は、カーボンナノチューブとPUの複合からなり、その結果、ダイヤフラムの瞬時の反応能力が向上します。明瞭で鮮やかな音像の提供により、Kiwi Ears Dolceはオーディオの体験を新たなレベルに引き上げています。

Kiwi Ears Dolceは、10mmのダイナミック振動板を特徴とし、業界をリードするLDP (LDPE+LCP) ダイヤフラムを使用しています。この振動板は、永続的な磁力を提供するN52磁石と、振動を効率よく伝達するCCAW 0.035mmコイルとともに、一体化されたデュアルキャビティシステムに内蔵されています。CCAW 0.035mmコイルを使った製品には、「水月雨(MOONDROP)/Starfield」があります。

Kiwi Earsは、その革新的なアプローチと持続可能な高品質により、オーディオ愛好家にとっての信頼のおけるブランドとなっています。その最新モデルであるDolceは、新しいLCD (LDPE+LCP) 振動板を特徴としており、最適なオーディオ解像度と音のバランスを提供すると主張しています。
Information

では、開封していきましょう!
「クラシック音楽などで使われるdolce(ドルチェ)は、発想記号の中の1つ。 イタリア語で柔和に、柔らかく[1]」という意味だそうです。パッケージ、フェイスプレートのデザインでイメージを体現できていますね。さわやかな風を運んでくる感じ。ご自身で開封している気持ちで写真を見ていただければ。








ハウジングは合成樹脂。大きさはKZ ZSN PRO Xとほぼ同じ。ロゴマークとLR表記が可愛いですね。ピンタイプは0.78mm 2pin。フェイスプレートは3Dプリンティングでブラックからブルーへのグラデーションがかかっています。このカラーリングが製品の魅力の一つです。





購入記録:店舗と価格と日付
「イヤホンお買い物日記」に今までに購入した全製品の記録があります。
Sound

所有しているイヤホンで音質比較をしてみました。
低音域・中音域・高音域の特徴を自分なりに書いてみました。さまざまな楽曲を30時間ほど聴き込み、その印象をメモしました。そのメモをもとにLLMで壁打ちをしながら、文章化したものになります。このレビューを書くにあって誰のレビューも読んでいないので、他のレビュアーさんとは感じている印象が異なるかもしれません。
低音域

Dolceは、パワフルな低音を醸し出し、そのサブベースは心地良い響きを提供します。一方、ミッドベースは、音の始まりがスカッと鮮明で、スパッと消えていきます。Dolceの低音の強さと細かい音の表現は非常に印象的で、非常に魅力的な特徴と言えるでしょう。
中音域

Dolceは、その中音域の鮮やかさと詳細な表現力で、楽器の各音をしっかりと捉えることができます。特に、ボーカルと楽器のサウンドは非常にクリアで、開放的な表現になります。さらに、中音域のバランスが良く、音楽の感情的な側面をしっかりと捉えることができます。一方、中音域の音場配置は遠く感じられるため、野外フェスのような音空間を作り出します。
高音域

Dolceのイヤホンは、高音域の明瞭さと詳細な再現性により、楽曲をクリーンな印象にします。特にシンバルや高音シンセなどの細かいパートもはっきりと聴き取れます。しかし、曲によっては高音が耳に残響のように残ることがあります。高音域はエネルギーに満ち、ディテールを際立たせますが、同時に音楽に空気感と広がりを与えることができます。音質はとてもクリアで、ボーカルも楽器も明瞭に再現されます。
Test Tracks

視聴環境は、付属イヤーピース・ケーブルの組み合わせで行っています。再生機器は、「ASUS ROG Phone 6」or「iPhone 13mini」。また、周辺機器での音質向上可能性を確認するために、以下の製品を使用しました。
今までに購入したイヤホンの全評価はこちらから♪
Taylor Swift / Anti-Hero
ポップスは低音のビート、中音のメロディ、高音のヴォーカルといった全ての音域が重要な役割を果たすジャンルで、そのバランスと調和が重要です。参考曲として「Taylor Swift / Anti-Hero」を選びました。
この曲では、ギターの音がはっきりと聞こえ、指さばきが眼に浮かぶような感覚を覚えます。特に印象的なのは、テイラー・スウィフトがサビに入る前に声が高く裏返る部分で、これが違和感なく自然に聞こえました。これはドンシャリが強いイヤホンだと音が潰れてしまう部分で、それが避けられたことはDolceの音傾向を示しています。

音質のクリアさは、まるで北海道の原っぱで音楽を聴いているような感覚を与えます。一方、シンバルの音は少しシャカシャカとした感じがあり、原音忠実派の方にはやや受け入れにくいかもしれません。その原因となっている可能性があるのが、低音の強い主張です。しかし、この問題はケーブルを変えることである程度対処可能だと考えます。
全体的に見て、ヴォーカルが他のイヤホンと比べるとやや遠く感じられますが、バランスと調和は適切に保たれていると思います。「エリック・クラプトン/Reptile」「ジャック・ジョンソン/In Between Dreams」といったギターの美しさを感じたいアルバムにも使って欲しいイヤホンです。
Hi-STANDARD / STARRY NIGHT
ロックは強調されたベースラインとリズムギターに特徴付けられ、これらが主に低音域から中音域にわたって配置されます。参考曲として「Hi-STANDARD / STARRY NIGHT」を選びました。特に注目したのはギターの中音域とベース、ドラムの低音域の再現性、音の分離感と解像度です。
シンバルの音は少々弱めでしたが、ギターとベースの音は明確に表現され、アタック感のある低音はこのイヤホンの魅力の一部と言えるでしょう。健さんのギターリフは特に爽快感がありました。また、このイヤホンはメロディックなハードコアの軽やかさとスピード感を適切に表現する能力を持っていると感じました。
音楽がまるで空気に包まれているような感覚、まるでライブフェスで聴いているかのような雰囲気があります。そして、男性ボーカルの方が女性ボーカルよりもこのイヤホンでの再現性が高いと感じました。ロックの概念は幅広いのですが、「NOTHING TO DECLARE/Another Light」はとてもフィットしていました。パンクというよりは少し重めのロックの方が適しているということでしょうね。
渡辺美里 / 10 years
J-POPは広範な音楽領域をカバーし、低音のビート、中音のメロディ、そして高音のボーカルまで、全てが重要な役割を果たします。また、ボーカルがより前面に出る傾向があり、歌詞の伝わりやすさやメロディラインの明瞭さが求められます。参考曲として「渡辺美里 / 10 years」を選びました。特に注目したのはタンバリンの音による高音域の表現力です。高音域の表現力が不足していると、タンバリンの音は不快な印象を与えがちです。
この曲は比較的高音に偏っており、情報量も多いため、良質な音を出すのは難しいと感じています。特に中華製イヤホンではタンバリンの音が耳に刺さることが多いのですが、このイヤホンでも付属のケーブルを使うと少々厳しい印象を受けました。

そこで、iFi audio GO linkに交換してみたところ、クリーンな音色が増強されつつ、不快感が消えました。これまで購入したイヤホンの中で最も優れた音質かもしれません。ボーカルが若干遠く感じられます。音色がエアリーで切ない雰囲気を持つことも気に入った点です。音が良いことと曲にマッチすることは違いますね。
オスカー・ピーターソン / コルコヴァード
ジャズは一曲の中で多様な音色が奏でられ、複雑なメロディから高音部のソロ(例えば、サクソフォンやトランペット)、そしてダブルベースなどの低音楽器まで、全てが重要な役割を果たします。参考曲として「オスカー・ピーターソン / コルコヴァード」を選びました。特に注目したのは、楽器の自然な響きと、中音から高音への滑らかな遷移がなされるかです。また、音の空間的な広がりや深みを再現する能力も評価の重要なポイントです。
レイ・ブラウンのベースが低音から中音域までしっかり聴こえています。このイヤホンの良さを生かすのにはジャズが一番いいかもしれませんね。左のドラム、真ん中のピアノ、右のベースの位置関係がしっかり掴めて、聴いていてとても楽しい気持ちになります。彼らが演奏しているバーに自分がいるかのようです。
アート・ペッパーやジョー・ヘンダーソンみたいな傾向のジャズは苦手かも。Waltz For Debbyをスコット・ラファロメインで聴く、なんて使い方にぴったり。ベースの低音に耳を澄ませて、静かな気持ちになりたいときにこのイヤホンを使いたいと思っています。
Mike Shinoda / Crossing a Line
ヒップホップは重低音のビートとリズム、そして鮮やかなラップボーカルによって特徴づけられます。参考曲として「Mike Shinoda / Crossing a Line」を選びました。特に注目したのは、重低音の深みとパンチ、そしてボーカルの明瞭さです。Mike Shinodaは、LINKIN PARKのボーカリスト、ギタリスト、そしてキーボーディストとして知られています。
Mike Shinodaのクリアなヴォーカルがしっかりと再現されています。低音はボーカルの存在を消すことなく、それでいて力強さも感じられます。このイヤホンの特性からか、ボーカルは若干奥に聴こえます。まるでストリートを歩きながら、チェスター[2]の思い出を追いかけながら歌っているMikeの姿が浮かんできます。中音域が非常にクリアで、低音とのバランスが少々取れていない感じもしますが、その不均衡さがこの曲の特性を引き立てています。あたかも「心の欠落を自覚しながらも、前を向いて歩いていく」という歌のテーマを反映しているかのようです。
VTSS / Body Mind Hell
テクノは特に重低音のビートとシンセサイザーによる中音の表現に焦点を当てるジャンルです。参考曲として「VTSS / Body Mind Hell」を選びました。特に注目したのは、低音の深みと力強さ、そして中音の解像度と明瞭さです。
「VTSS / Body Mind Hell」を聴いてみると、エネルギッシュな低音域がこのジャンルに活力を与えています。しかし、スピード感はやや物足りなさを感じます。アッパーな曲調のEDMやユーロビートよりも、VTSSのようなダークネステクノと称されるアーティストの作品がこのイヤホンに合っているように思います。
メジャーなアーティストの中では、Ellen AllienやCharlotte de Witteの曲もパワフルでありながら、ある種の憂鬱さを感じられるのが良いです。
Sailing Before The Wind / Vanishing Figure
メタルコアは重厚なギターリフと力強いドラムが特徴で、これらは低音から中音領域を占めています。参考曲として「Sailing Before The Wind / Vanishing Figure」を選びました。特に注目したのは、低音のパンチと力強さ、中音の解像度とギターリフの明瞭さ、そしてボーカルの表現力です。
まず、タイトなドラムから始まります。その段階で既に合格!ギターリフは重厚でありながらもキレがあり、爽快感があります。メタルコアはボーカルが低音からクリーンまで幅広いのですが、それが明瞭で快活なトーンで聴こえます。このバンドは技術的に優れていて、このイヤホンを使えば何度でも深く聴くことができます。パンチが効いていますが、残響がなく綺麗に消えるのもいいと感じました。

リズムセクションの重低音がディテールまで表現されており、高い没入感が得られます。全体的には、激しさの中にある美しさ、そして純度の高いクリーンさがしっかりと伝わるイヤホンです。メタルコア、ジェント、北欧メタルなどのメロディックでクリーンなメタルに親和性が高いと言えるでしょう。
結論

「Kiwi Ears Dolce」は、さわやかな気分に浸るためのお気に入りの曲を楽しむのに最適なイヤホンです。その高い明瞭度と広い空間感により、音楽体験は一段と高まります。このさわやかな印象を保ちつつも、低音は力強く楽曲を支えます。
価格は25ドル(2023年7月5日現在のAmazon価格で3,630円)で、この価格帯では競合する「Truthear HOLA」や「7HZ Salnotes Zero」「TANGZU Wan’er S.G」に比べて優れている部分が多いです。これらの競合製品はどのジャンルも満遍なく聴きやすいのですが、ちょっと物足りなさを感じることもあります。そんな時には「Kiwi Ears Dolce」がぴったり合うでしょう。

「Whizzer ポータブルDAC DA1」と「NICEHCK BlackCat」の組み合わせが最適でした。「Whizzer DA1」は高音の刺さりを削ぎつつ、低音に厚みとエネルギーを付加するという特性があります。ケーブル自体は音質を変えるほどの効果はないでしょうけど、見た目的に統一感が出ますね。

最も心地よく聴くことができたジャンルはジャズです。特に、テナーサックスではなく、ベースを味わいたいときに適していると感じました。また、テクノやメタルコアなどの低音を活かしたジャンルにもマッチします。個人的には「KZ ZSN PRO X」よりも低音の味付けが好みでした。
結論として、その価格を考えると、「Kiwi Ears Dolce」は低価格帯のレギュラーになり得るポテンシャルを持つイヤホンと言えるでしょう。私の所有するイヤホンの中では最も高価ですが、それでもその価格は手頃です。豊富なイヤホンを所有している方々からすれば、このイヤホンが新たな印象をもたらすかもしれません。1DDの音を好む方には、ぜひ試してみてほしいと思います。
